メタルギアソリッド4 PS3 〜小島劇場総出演の巻

ヨドバシでは通常版すら売り切れていたメソ4、amazonスペシャルエディションが40%引き、お急ぎ対応だったので注文してみました。


今回のメタルギアは、伝説の傭兵ソリッド・スネークの最後の物語という事で、プラットフォームをPS3に移し、遺伝子操作によって急激な老化が始まっているソリッド・スネークことオールド・スネークが主人公の物語です。


ストーリーに関しては、未だに売れているゲームなので肝心な部分に関して語るのは止めようかと思います。それでも一言だけ言わせて貰えるならばかなりの部分で前作までプレイしている人間を対象としている、所謂ファン向き作品である事だけは伝えておきたい。
20周年記念パッケージも別途、発売されているので、もし未プレイならば、それらを遊んでから是非挑戦してもらいたいですね。


● 設定のちぐはぐさ加減
鶴岡さんはメタルギアシリーズを『トム・クランシーの劣化版』*1と斬っていた事を思い出すのですが、よしつねとしてはアニメーションテイストが強すぎるという風に考えています。
確かに、スネークさんやその他PMC達のキャラの動きは毛利氏により、より本物に近い*2し、技術的な講釈も悪くない、と思う。
しかし、それらを上手に上手くまとめようと思うのがそもそもの間違いであり、ストーリー展開に対してテクノロジーがかみ合っていない印象を強く受けました。
BB部隊*3は設定、背景は良いものの、中身が女性である必然性が全く無いし、微妙にセクシィ*4なのか?という構図、ポーズも個人的にはアレである。様はこれPS3で表現できるからやったという感覚が抜けないんですよね。
そして、最もいけないのがメタルギアソリッド2を無理矢理組み込んだストーリーが悪い。これに関しては、どー考えても無理があるだろう的な場面が随所に見られる。
そも、ソリッド・スネークの物語を描く上で2って殆ど絡んでいない*5んですよね。
こうした無理から来る、設定のちぐはぐさ加減が序盤から目立っています。


● 映画でもゲームでもない≠ゲームを超える
そして、よしつねのごく私的な意見としては、戦場という舞台演出がなっていないと思うんですよ。
最近の戦場演出で優れているなぁと思ったのがCall of Duty 4:Modern Warfare*6です。実はこのゲーム、メソ4初期のコンセプト『世界の戦場を転戦する』というところで、ソロキャンペーンが見事合致するんですが、こちらはけれん味たっぷりのハイテク…否、オーバーテクノロジーを使用していないにもかかわらず、何故か生々しい戦場が展開されるんですよね。
そして、小島劇場に必ずあるCoD4は変なテンポでのジョークが全く無いのに、実に面白い*7んですよね。
そう、やるならば徹底して真剣勝負でやってしまった方が、多分受けは良かったんじゃないかなぁと思うんです。
結局のところ、演出は映画*8、でもプレイヤーにはゲームとアニメを課すといういびつさ加減が顕著になったのが、メタルギアシリーズなんじゃないかと思います。


● それでもやっぱりメソが好き!
…とまぁ、クソゲーテイストを前面に押し立てたレビューを決めてみたものの、実はゲームとしてはかなりの出来だと思っています。
欠点は上げればいくらでもあります。ゲーム以前にHDDインストール仕様でもロードが長い、そも、インストールの仕様がおかしい、ムービーシーンもやたらに長い、一見すると、ムービーの割合に対してゲーム部分のボリュームが不足しているように思える等など…。


逆に個人的に最も評価している点が夏木マリ』の演技が実に素晴らしいんですよね。これはポイントが高い。
最近、有名な役者さんがゲームの声優としてキャスティングされることが多いのですが、これは若手よりやっぱり、芝居に対して齢を重ねてきた人間こそが説得力が出るのであって、とりあえず出しとけ的な若手役者で全てぶち壊しの愚を冒さなかっただけでも評価が高いし、そしてその演技は、僕の予想をはるかに超えて素晴らしい*9ものでした。
例えスクリプトが陳腐であってもな!夏木マリの演技が台無しだろうがっ!


…とまぁ、文句の付け放題ですが、ゲームとしては遊び方に色々と幅があります。例えば、敵を殺さずに進んでいく事も出来れば、対ボス戦を瞬殺で終らせる攻略、ルート外の様々な仕掛け、綿密な攻撃兵装の設定、ギミック…このあたりは流石の出来栄えです。


第一、好きだからこそこんなにまでつっ込むんです。じゃなければ、こんなに突っ込むはずもありませんってば。


長々と書きましたが、ゲームとしては悪くなく、映像作品としては上質と言えます。シリーズ、というより小島作品未経験者お断り仕様ですが。逆に経験者は、様々なネタで『お?懐かしい…!』*10と思える箇所もあったり。
あくまで、小島監督作品の集大成としてみるのであれば、十分に楽しめると思います。
ゲーム単体としてみた場合は普通以上、というのが評価の限界です。
お勧めはしませんが、安くなってたりワゴンや中古にあれば。

*1:他にも『説教に値段を付けて売るな』とか。この人の罵詈雑言検索能力は真実を的確に突いているだけに面白い

*2:中には雷電やヴァンプといった、フィジカルリミッター及び物理法則のネジがグロスで抜けているようなぶっ飛んだキャラもいる。これは逆にある意味、見所と言えなくもない

*3:美女と野獣』の頭文字をとってBB部隊。メタルギアシリーズには毎回、個性的というか、超人で構成された特殊部隊が出演する。彼らを打ち倒すのがゲームの一つの目的でもある

*4:少なくとも、タイタニックを撮る前のジェームス・キャメロン程度の色香の表現はある。逆に言うと『向こうのnardが考えそうな』色香であって、女性の魅力を引き出すまでには至っていない気がします

*5:ACT3終了、ACT4序盤まででの判断。別に雷電雷電じゃなくてもいいし、ローズマリーは別のキャラでも良い訳である。逆にビッグボスやビッグママは彼/彼女でなければストーリーが構成できなくなってしまうのである

*6:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB_%E3%82%AA%E3%83%96_%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A34_%E3%83%A2%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A2

*7:この辺も、小島作品がジェームス・キャメロンに強く影響されているなぁ、と思います。事実、エイリアン2あたりのキャメロンのジョークのセンスは本当にアレなんで、これで笑えるのって軍事ヲタかひねた厨二(よしつね含む)だけだよなぁ、と思っていました

*8:そして、よしつねが映画的演出で一番いびつだなぁと思っているのがスパイアクション…はっきり言うと007の要素、スネークさんのタキシードとかあの辺が最もいびつだと思っています。普通に軍事系…士郎正宗あたりが好きでメタルギアを遊んだプレイヤーとしては、007、特に初期のアイディア勝負の007は殆ど見ていないだろうし、最近の007はメタルギア以上のスケールでリアリティ<エンターテイメントという公式で撮影しているので、映画演出でメタルギアが敵う筈が無いんですよ

*9:片仮名言葉を全く違和感無しに自然に口にしているのがとにかく素晴らしい。最近の声優さんでもイントネーションが変になるIT系の用語を適切な韻で読める、それだけでも評価が高いのに…逆にヴァンプは置鮎氏の好演があったにもかかわらず、塚本監督というのは…MGS3系のキャスティングならばともかく、MGS2はアニメ演出の最たるものですから、逆に似合わないんですよ。僕の中では。ヴァンプの厭らしさや偏執性は普通の俳優さんに表現は無理です

*10:とりあえず、これから遊ぶ人にもネタ探しをしてみる楽しみを与えたいので。narc:ポリスノーツに出てくる麻薬、マッドナー博士:スナッチャーに出てくる、スナッチャーの開発者。スナッチャーは人間と入れ替わる人工骨格がベースなので、雷電の修理という意味では説得力がある。ランダム・ハジルとセットで覚えよう