ANGEL GATE 〜渋谷の片隅で歌をつむぐ

昨日の事。前の会社の上司のやなさん*1から、ミュージカルのチケットをただで貰うという幸運に恵まれました。


どんなお芝居かと言うと…。



ストーリーとしては、渋谷の片隅のライブハウスに、この世と天上界をつなぐ門である『エンジェルゲート』があり、天使見習いのリョウは自分の娘であるユリの魂を導くことになって…という、実にアニメテイストなストーリーです。


このミュージカルの一番の見所は何と言っても、主演が南里侑香である点。え?誰だか解りませんか?んじゃあ、FictionJunction YUUKAのボーカル、YUUKAである。
もうそれだけで、よしつねは快諾した次第であります。


場所は新宿の次の駅の初台。オペラシティ云々とか言う場所。オシャレな場所であるが、どっちかと言うと初台ならばDOORSの方が有名*2、かな?


来場者をざっと見渡すと…自分も含めて半数以上はヲタ属性。プロは臭いでわかるのよっ!と、ガンスミのミニーメイ*3を語るでもなく、一発で解る。更にその半分は以外にも『老夫婦』。そして更に半分と半分が関係者と芝居好き、と言った感じ。
正直、この時点では語るに値するものか? と本気で心配していました。


さて。観劇の感想をば。
色んな意味で極端なミュージカル、でも十分楽しめるクオリティ。というのが、本当の感想。


芝居から言うと、同じく主役、ユリの父親であるリョウは神田利則、なんですが…。こういうストーリーだからいいものの、もっとちゃんと芝居しないと駄目よ?神ちゃんは?という、微妙な演技…テンションに任せて、台詞を流し気味というのが微妙に気になりました。
父親役なのですから、もう少し『憂い』と言う点、それから父性というのを出していかないと、娘役のユリの変節に説得力が欠けてしまいます。


ユリの変節…ユリは引きこもりのリストカッターで、10年前に自分の歌の為に渡米した父を恨んでいる、という実はかなり難しい役を南里侑香さんはこなしていましたが、その心情の変化を上手に表現できていたと思います。
脇を固める吉野紗香篠山輝信も『こういうストーリーだから』と言う点ではまずまず。


一番駄目な点で気になったのはライティング…照明がとにかく下手で、役者とかみ合ってなかったと言う点。
暗転でフェードインのタイミングが早すぎたり、ユリが父親の歌を歌う前、前半部では照明に思い切りが無くて、役者のテンションについていってないのは本当にもったいない。
後半部でも、ピンスポの調整を慌ててしている*4のを『舞台の近くで』やっていたのは頂けない。


セットと舞台の使い方は実に良かった。
とにかく舞台を広く使う事に重点を置かれていた様で、そして、立体的に使っていたので、その辺は非常に満足、プロの仕業と言うのを感じました。
セットの使い方も上手。小道具を含めて、あっさりしていつつも上手に使いこなしていました。ユリの友人のヨウヘイが、ユリが交通事故で瀕死なり病院に運び込まれた時に、ギターを背負っていたのは流石に苦笑しましたが。


その他に駄目な点で目立ったのはストーリー運び。
尺の都合もあるのだろうし、二回公演もあるだから、多少の説明不足は致し方ないとして、とにかく目立ったのはユリの心変わりの説明が圧倒的に不足していると言う点。


ユリの演技がかなりきっちりしていただけに、ユリは何を受けて心変わりしたのか、リョウの何によって歌について考え、自分で歌おうとしたのか、という点の説明があまりに無さ過ぎる。これは非常にもったいない。


ストーリー運びと言う点ではもうひとつ。
HIDEBOHBON-BON BLANCOの登場があまりに唐突過ぎる。*5HIDEBOHは劇中でタップを披露、BON-BON BLANCOは一曲歌う、という入り方だったのだが、これも説明不足のお陰で唐突感が否めない。HIDEBOHは芝居の頭と間幕開けなので、流れとしてはいいものの、BON-BON BLANCOに関しては、あまりに突然すぎて状況が解らない、という人もいるんじゃないだろうかなぁ。
BON-BON BLANCOの登場前にMCのひとつでも入れたら、十分、ライブハウスに来ているって説明になったのだろうに…。
そういう意味では、このミュージカルは不親切に尽きます。


しかしながら…。
親子の愛情、歌への想い、友情とほのかな恋心、葛藤、そういうものは表現できていると思いました。
また、ストーリー的には唐突だったりちぐはぐでも出演されたアーティストさんはどれも一線級のパフォーマンスを見せてくれたしね。
十分元を取れるのではないでしょうか。


んでもやっぱり…この芝居の一番の魅力、それは南里侑香の生歌と言えるでしょう。ANGEL GATEを歌い始めた瞬間、背筋がゾクゾク来ました。吉野紗香とのツインボーカルだったのですが、格の違いを見せ付ける、圧倒的な歌唱力はとても素晴らしい。それだけでも見に来た甲斐はあるってもんです。


え?なんですか?侑香たんの制服姿ですか?いや、まぁ、その、似合っていると言うには…だって胸にボリュームがありすぎて、アレは…アレが何かは、各自で考えてね♪


とまぁ、見所とターゲット層は絞られてしまう可能性があるお芝居、ではあるのですが、少なくともドラリオンに行くよりも、人によっては、特に南里侑香大好きっ娘ならば絶対に行っておくべきというミュージカルでした。


最後に…。
ANGEL GATEは.hack//RootsのC/Wになっているので、気になる人は聞いてみるといいかもしれません。いい曲ですよ。


最後の最後…。
ラストの『あのシーン』は、実はとっても気に入っている。

*1:引っ越し祝いに来て頂いて本当にありがとう!サクサクメイプルシュー、マジうまかったっす!

*2:当日もライブ待ちのお客さんでにぎわっていました。しかし、あの殺人的な空間は…

*3:実際は主人公のシューターでバウンティハンターのラリーが処女かどうか、という場面で使用したんだけれどね。しかし、20年もヲタをやっていると、服のセンスひとつでヲタかそうじゃないか、というのが手に取るように解ります。どんなにオシャレをしていても『いつもは着ていない』という違和感は如何しても否めないものです。それから、統一感というかテーマも無ければ、アクセント、強調したい点も見えてこないからね。服のセンスは磨けば光るので、気になる方は頑張ってみよう。僕? 僕は『意図して』ズラしています。流石に女の子と会う時は『しまったなぁ、もう少し洒落っ気を…』と思うのだけれど、いつも手遅れ

*4:これは、ライト数の物理的制限があるので、致し方のないことなのだが、舞台の近くでやると言うのは、普通、演劇ではタブーとされているんだけれど…ねぇ

*5:HIDEBOHはこのミュージカルでは振付をしている。BON-BON BLANCOはキャストの殆どが所属しているスペースクラフト所属のアーティスト、と言う理由もある。BON-BON BLANCOはラテン系がよく似合っているし、アニメのOP等で馴染み深いし、嫌いなアーティストさんではないのですが…