陰山琢磨 センチュリオン強襲作戦

この本の書評は一度、どこかで描きたかったんだよね。
あらすじとしては、シンガポールの兵器企業で開発されていた二足歩行型支援兵器『センチュリオン』の突然の開発中止に独断で女開発部長は、開発時の模擬戦闘を行っていた旧ロシア傭兵のつてを使う。ロシア傭兵を取りまとめているヴォロシロフはこの依頼を受け、センチュリオンに欠けている操縦用のGUI、そして戦闘実績を得るため…。というのがあらすじ。
まず最初に、AFVが好きな人間にはまず読んで欲しい。
センチュリオンの射撃性能に若干のファンタシーも含まれている気がしますが(ミニミが正確すぎる気がする、NTWの直下射撃はちょっと無理な気がする)、センチュリオン武装はかなり練りこんであると思う。分隊支援火器のミニミに対物ライフルNTW、両肩にはコルネットとFAE、分隊支援としては理想以上な気がする。
先に書いた通り、センチュリオンは本体は完成されているのだけれど、操縦用のGUI、それから戦闘実績がない。GUIを弱小だが技術力のあるゲームメーカに発注、そして戦闘実績を自衛隊の74式を相手にすることで得ようとする点が面白い。特にGUIの作成シーンは『メックウォーリア』の比じゃなくリアル志向で書かれている。それから戦車の描写もすごいぞ。APFSDFの発射シーンは作者が戦車オタクを自称するだけあって、非常にリアルだと思う。とにかく砲弾のチョイスはシヴい。
センチュリオンの運用方法も『本来は歩兵支援だが、精緻な行動が可能である証明を得る為』に都市型のテロを選ぶ点も良い。センチュリオンのコントロールもネット経由でPHS、衛星回線使用とは。数本のバルク回線ならば確かに持つかもしれないし、MPUの自立プログラムが優秀であれば対応できると思う。
ちょっと締めがどうか? と思われるかもしれないが、この小説の読みどころはセンチュリオンvs74式、それからセンチュリオンvsSATなんで、そこをとにかく評価しています。特にSATの対センチュリオン作戦とやられっぷりは面白いぞ!あえて内容は書かないけれど。
タイトルとあらすじだけじゃ『笹本祐一風の展開』を髣髴しそうですが、実は戦車好きにはたまらない本です。