真・女立喰師列伝

と言う訳で、やなさんの御好意もあって見ることが出来ました。


くそシネェェェェェェェェェェェェハンッ・タァァァァァァァ!推・参!
…と、思ったけれど、今回は出番無し。純粋に楽しめました。


渋谷にはかなり早めに着いたので、チョコクロをチャイで流しつつやなさん待ち。上映館は渋谷シネクイント。パルコpart1の裏にあるパルコpart3の8Fにあるミニシアターです。
20時30分くらいに合流、チケットを購入した後にパルコpart1のダイニングキッチンで適当に夕食。お出汁の効いた雑炊と豚トロの天然塩添えは絶品だったが、野菜フォンデュは普通。


今回見てきた映画はこんな感じ。



こっちはネタバレも多少なり含むので、見た後・見られない人にお勧めする。



んでもって上映時間。
前の上映回に何か新作の試写会をやっていたので、混み混みでしたがシネクイントは全席指定なので、余裕で着席。
観客は言わずともがなの男女比9.5:0.5という圧倒的戦力比なれど、徐々に女性が増えてきているのは押井守の認知度が上がってきた証拠かな?


本編は前作同様に、おのおのの『立喰師』を個別に追っていくオムニバス形式、というのは変わらないのですが、前作のベープアート*1から、オール実写*2になり、しかも、登場する全ての立喰師が女性のみという…ある意味、とても興味がそそられる反面、怖いもの見たさ*3でもありました。
ということで、差し障りの無い程度の感想をば。


■ 金魚姫 鼈甲飴の有理
楽屋落ちが多いのですが、やっぱりウルトラセブンのアンヌ隊員である、ひし美ゆり子のイメージそのままで撮影した感じがありますね。しかも、セブンのアンヌ隊員ではなく齢(よわい)を重ねた女性の美しさというのを、立喰師というテイストに乗せて、というところで上手にまとまっている。*4
以前どこかで監督が『大人の恋愛、ジェンダーに興味を持っている』とか言っていたのを聞いた様な気がしますが、なるほど、これがその回答と思わせるものがありました。
そして、ネタでひし美ゆり子を使っただけじゃない、立喰師としての説得力がありました。


■ 荒野の弐挺拳銃 バーボンのミキ
これは押井監督の世界観から抜け出た立喰師と言った作品。
ぶっちゃけ、今回のオムニバス中で一番解りやすくて見やすい作品だと思います。んで、個人的な見所としてはガンの扱いがしっかりしているという点。西部劇なのに、見所であるリボルバーのマグチェンジを適当に描写するだけならまだしも、オートでマグチェンジどころか無限弾装にしちゃってる作品が多い中、リロードやスライドオープン時の処理がちゃんとしているだけでも評価が高い。
キレの良いアクションもいいし…何分、水野美紀って美人さんが派手なガンアクションを披露するだけでも十分な見所です。
しかし…立喰師としての魅力は薄い、かな。


■ Dandelion 学食のマブ
攻殻機動隊SACの神山氏が監督・主演の物語。神山節が全開のいい感じのストーリー展開。
ストーリーに関しては、立喰師という特殊性を除いたとしても十分に成り立つストーリー…というより、立喰師はテイストとして入っている、というだけ*5。あくまで神山作品*6
見所としては、無論ストーリー展開なのですが、神山監督のガンの扱いが異様に手馴れているという点。
こちらも立喰師としての魅力は薄め。


■ 草間のささやき 氷苺の玖実
最も立喰師らしくない作品。だけれども、美術的な美しさは際立つ。こちらも押井監督の世界観から抜け出た立喰師、かな。
見所としてはやっぱり、ストーリー展開。立喰師という拘り、制限が無い分、普通の作品として楽しめる。この手の逸話はどの地方でもあるのですが、実に情緒と風情に溢れる撮り方をしています。サトウキビの使い方が上手いかな。
個人的にラストの母親の台詞には…背筋がぞくっとしました。やはり、女性は強いな、と思わせる台詞。
立喰師としての魅力は殆どありませんが、話は面白い。


■ 歌謡の天使 クレープのマミ
瞬間湯沸し器並のキレやすい監督、神谷誠の作品。色んな意味でオマージュ的な作品なのかな?
正直、1985年という設定だけで三十路以降限定なんですが、ジャストインタイムだった世代、しかもヲタテイストを思う存分満喫した世代にとっては妙に説得力のある設定が面白い。
正直なところ、小倉優子というだけで笑いが取れてしまう*7んだけれど、個人的にはカメオ出演てんこもりな親衛隊の面々ですよ!ここで笑える人は、現在のアニメを見ている人間でも『通』な人間だと思いますね。
立喰師としての魅力も、小倉優子の食いっぷりと薀蓄で十分に満喫できます。


■ ASSAULT GIRL ケンタッキーの日菜子
全てはオチの一言にある。
ええと、映像美は十二分にあるし、降下猟兵という設定も十分に楽しませてくれるのですが…美人がこういうの、ってのがいい。


…とまぁ、小難しく書いてみましたが、実は前作の立喰師列伝より確実に見やすく楽しいにも拘らず冷遇という、ある意味とても不遇である作品*8と思います。
もし観られる事が出来る幸運があるのであれば、見ておいた方がいい作品です。

*1:割り箸の先に絵を書いてくるくる回す、ってアレ。解りやすい言い方をすると、パラッパラッパーみたいな感じ、というのがいいかもしれない

*2:無論、昨今の映画の例に漏れずCGアートは使われている

*3:本音を言うと、関東で単館上映に加え、上映時間が21時以降というのもあり、DVD待ちにしようかと思っていた

*4:しかし、ある意味、真実のひし美ゆり子を撮影しただけ、という気もする。酒と煙草は彼女の好物どころか生涯の伴侶とも言えるし。しかしながら、いや、これは見てから

*5:ちょっと手直しすればSACで流してもおかしくない、って感じ

*6:SACというと、笑い男なんだが、今、思い出したのだけれど、サリンジャーリボルバーって組み合わせは、ジョン・レノンを殺害したマーク・チャップマンをモチーフにしている、のかなぁ…?

*7:事実、そういうシーンがあったのだけれど、ここで笑ってしまうのは、この作品を存分に楽しんだ事にならないんじゃないかなぁ?

*8:しかし、押井監督自身、『立喰師』シリーズは場末の映画館で見るもの云々、という事をトークショーで言ってました