立てこもり事件

興味がある人だけ、読んで欲しいので、逢えて抑え目な表現で行きます。


まず…犯人の動機から。
正直、10年前の僕だったら『さっさと突入で以上、でいいじゃない?』と思っていた筈。
…けれども、今となっては痴情の縺れ、というのも立派な動機なんだよなぁと思います。若くてやろうと思えばなんでも出来る、という状態ならば、正直金が無かろうが才能が無かろうが、事に邁進するだけで全てを忘れられるのですが…。
実際、三十路を越え、四十路も何となく意識しなければならない歳になると…やっぱり、頼ることが出来る人が欲しい、という欲望は抑えがたいものとなります。


無論、だからと言って、銃を振り回して交渉、ってのは間違っていると思いますけれど、『動機としての心境』というのは、解る、そういう事です。


それから、SAT隊員の犠牲とその報道について。
テレビ朝日をぼうっと見ていたのですが、『突入が遅い』『SAT隊員の殉職は作戦ミス』『説得が甘い』とまぁ、かなり無理解が先行している報道が気になりました。
それから、事件が進行中の時の報道体勢とかいくつか。


● 突入が遅い
確かにその通りだと思いますけれど、この国では『警官の発砲がニュースになる』という国ですので、突入の際には『犯人も含めて』犠牲を最小限にするには、ある程度の持久戦に持ち込むしかないのですよね。
そも、実力行使として突入なぞ不確定要素を多分に含む解決方法より、狙撃でもした方が被害が最小限に抑えられますしね。無論、程度の問題で、一番は投降させるよう説得、がベストだと思いますが。
作戦行動の明確な説明と言うのは、事件解決後に行うべきなんじゃないかな、と思います。このままだと、無理解で自分の首を絞めることにしかならない、ですからね。
そも、突入と言うのがどれだけ難しいか、という説明から始めるべきなんだと思う。
それから…SATのモデルとなっているSWAT*1ですら、出動時の8割以上が交渉、ネゴシエートである、と言う認識を浸透させないと、こうした変な報道になると思いますね。


● SAT隊員の殉職は作戦ミス
うーん、これはとても判断が難しい。
AO内では、相手の武装如何に関わらず、油断してはいけない、という事だとは思いますが…確かに、ハンドガン一丁、しかもリボルバー*2という武装だし、SAT隊員は防弾ジャケットに防弾マフラーもしていた訳ですから、油断も生まれてしまう、のかもしれません。
そも、根本的な事を考えると、SATの展開が早すぎたと言う問題もあるかもしれません。
現場ではSITやMAATまで展開*3していたらしいですし、現場の指揮系統に問題がある、と言う意味ではその通りかもしれません。


● 説得が甘い
テレビ朝日では『説得の口調が甘い』と言っていましたが、SAT元隊員が一蹴したように、高圧的、ましてや攻撃口調じゃ説得できるものも説得できませんからね。
浅間山荘の時に陣頭指揮を執っていたお爺さんが国民の前で弱腰は反省点とか何とか言っていましたが『必須の獲得目標でありミニマムサクセス*4は犠牲者ゼロ』という点を考慮すべきだし、何より『信頼関係』が構築できなければ、投降どころか説得すら出来ませんぜ、と。
30年以上も昔の理論は現代では通用しないのである。


● 報道体勢
リアルタイムでの報道体制は、流石に要所では真っ暗にしていましたね。
最低限、この辺だけは守るべき報道倫理だと思いますよ。作戦行動中に犯人にこちらの行動が知られると言うのは、例え犯人がソロであってもとても危険なことですからね。
しかし…。
事後の報道は、何だか視点が別のところに…犠牲者が出た事や解決の遅さという警察叩きばかりが目に付いています。まぁ、テレビ朝日のニュース、と言うのもあるんでしょうけれど。
もっと他に、報道するべきことがあるんじゃないかな。具体的に何が、というのは、ここで言うのは適切じゃないし個人的な弊害が大きいから言わないけれど。


いずれにしても。
痴情の縺れ、というのは根絶できない分、難しい。きっかけがどこにでもありふれている分、本当に厄介だと思う。
だから、『必然として』こうした事件の発生を考慮する、そして、解決方法としての武装警察への理解、というのを進めなければいけないんじゃないかな。
無論、警察自ら。*5


ローエンフォーサ、頑張れ。

*1:今ではこの名称を使うところも少なくなってきているとか。SRT:Special Response Teamとかね。ESU:Emergency Service Unitとかもあるみたい

*2:警官救出時に相手の武装を確認できていたかは不明だけれど。狙撃手も配置されていたのだから、確認できていないとすれば、確かに作戦ミスと言えると思う

*3:この二つのチームは装備が充実しているので『タスクフォース制度』という制度を使い、所轄割りを超えて活動することが出来るらしい

*4:コンプリートサクセスではなく、ミニマムサクセス、最低でもクリアするべき成功目標として、犠牲者ゼロが設定されているのである

*5:活動予算の獲得とか、そういうものを考えると、もっともっと、アピールするべきなんだと思う。無論、装備自慢ではなく、こうした方法で犯罪を処理する事も出来るんですよ、という点、そしてそれが最も安全で被害を最小限に抑える手段ですよ、という事ね