FLAG

nekoさんとこで、面白そうだったので。高橋良輔監督*1の作品です。GYAOで現在、ファーストシーズンが無料公開中です。



とりあえず、4話まで見た*2感想を。


世界観の作りこみがとても丁寧で好感が持てます。
高橋監督は、予算と期間があれば、こんなにいい作品が作れるといういい証明です。エリア88とか、酷かったものなぁ…。
前情報を殆ど無し…『内戦の話』『カメラマンの視点』『二足歩行兵器の登場』…この程度しか情報しか仕入れなかったのも、好印象の要因かも。


演出面での話題の種である、主人公の白州冴子の声を田中麗奈が当てている、という点はまずまず。但し、あるシーンでの緊迫感の欠如がとても気になりました。例のUAVを飛ばして、ガンサイトから銃撃を受けるシーン、ですね。
この辺は…致し方の無いところ、なのかなぁ。


んで、現実感の構築という事で、ハッセルブラッドのファーム起動画面やCICでの情報画面内の表示内容というところは、とてもよく出来ていると思います。
それだけに…素人っぽい偵察行動や二足歩行兵器が浮いてしまいます。


ああいう地形であれば、基本的に衛星で情報収集をして、その後にステルス機の遠距離空爆でガンサイトを潰した後にUAV…無人偵察機による戦果確認の後に歩兵による降下作戦、ガンサイトがまだ生きていた場合は再度空爆か、遠距離での狙撃、携行火器によるガンサイト制圧…と素人でも思いつく作戦を実行できない、というのはどーも。
通信の情報量を把握できるくらいの情報収集が可能であれば、徹底してアウトレンジシュートというのが可能だと思うんですがねぇ…?
フラッグ奪還、という目的があるとしても、見えている火器を空爆しないというチョイスはどうにも意味不明です。


UAVの飛ばし方も、絵的に見栄えがする方法を取ったと思うのですが、例え渓谷沿いに飛ばすとしても、ガンサイトの有効射程の外から飛ばさないと…じゃないと、何の為のUAVなんだか!


そして、ここまで言っちゃったので、もう全部吐き出すつもりですがハーヴィック、無かったほうが面白いんじゃないか?と思う次第です。
どうも、ハーヴィック*3の所為で作戦展開が限定*4されちゃっている感が、あるんだよねぇ…。


ここまでしっかりした世界観、現実感を構築できているが故に、二足歩行兵器を出す意味が、逆にハーヴィックが出ることによって、無理が見えちゃうんですよねぇ。
そも、装備重量が2tで40mmを撃つというのは…ちなみに、90式*5は50tで120mmを撃っているというのを考えると弱装弾でもひっくり返るんじゃないか?と思えてしまって…。


しかし、ここまで書くのは、それだけ世界観、現実感がとてもよく構築できているからです。
内戦の背景をしっかりと作りこんであり、単にだらだらと戦争しているというわけではなく、根底にしっかりとした理由があるからこそ、ハーヴィックが浮いてしまうという事*6であって、ミリヲタでも無ければ、普通に高品質のアニメを堪能できます。


現実の延長線上を語ることによって、現実を見直すという、SFの本質的な楽しみを存分に味わえる、とてもいい作品です。
この正月だけ、無料で見ることが出来るので、時間があれば是非にと、お勧めします。

*1:ボトムズレイズナーの監督といえば通りがいいと思う

*2:実は、これ以降が戦闘シーンで盛り上がると思うのだが、敢えてここで一回目を書きます

*3:作品中に出る二足歩行兵器。装甲車形態から人型への変形機構を持つ。設計思想として外骨格という位置付けをもっている。米軍のランドウォーリァーの延長線上にある…という解釈は、かなり無理があるか? 兵器の特性上、操縦者に負担が大きいという描写もあるが、それで本当に実戦に役に立つのかどうか…

*4:実は、こうは書いたものの、現実でこういう、押し付けられた火器の所為で有効な作戦が立案できないということはままあることだという

*5:90式は概観こそ世界の第三世代戦車…エイブラムスとチャレンジャー2のいいとこ取りみたいに見えますが、実はかなり高性能な兵器。どうも役立たずに思われていますが、そんな事はありません。正面装甲は120mmのAPFSDSに耐えるし、上面装甲も自己鍛造砲弾に耐えるそうです。少なくともタカ派の連中は馬鹿では無いので。専守防衛を標榜している国なのに、着剣ラグを正式銃に要求するという点だけでも、まんざら馬鹿では無いと思う。そして、90式の最大の欠点は、実戦経験が無い。この一点だけである

*6:TVという縛りが無いWebストリーミングアニメであるので、商売っ気を減らせば、二足歩行兵器を出す必要は全く無いと思う。逆に、高橋監督はそんなものに頼らなくても面白い話を作ることが出来ると思う