立喰師列伝 〜一流の真剣に作ったネタ、もしくは監督の半生

という訳で、立喰師列伝、見てきました!


当初の予定から一日ずれてしまったので、僕とneko氏の二人で見に行くことになり、だったら車で、京成ローザに行こうということにしました。
本来ならば14時の回に見に行こうかと思っていたんですが、道に迷った事もあり、それでもギリで間に合う予定だったのですが…。
餃子の王将寒川店!てめぇらの糞遅いオーダー、二度と忘れんっ!
しかも、ラーメンが最悪に不味かった…既に、この時点でよしつね、立喰師入ってマス。


立喰師とは、戦後の闇市から現代まで生き続ける立喰屋に対し、その巧みな技で店主を感服させ、見事無銭での飲食を獲得しうる、架空の仕事師です。
そして、立喰師列伝は、その伝説の立喰師達の生き様を語る映画です。


まずは手法面…演出から。
この映画は実写でもアニメでもない手法を取っています。攻殻機動隊では当時でも最高峰のCGをふんだんに取り入れて、士郎正宗の世界を独自に表現して見せましたが、今回は完全にオリジナルの作品を新しい手法で見せています。
全ての登場人物をデジカメで記録した後、様々な加工にて演出しています。
これだけ聞くと、ミニパト*1を髣髴するでしょう…が、この作品は更に一歩進んだ形で表現しています。
背景や舞台をもデジタルスキャンし、独自の空間を表現しています。
最初は全体的にダークなトーンであり、動きも止めが基本で、最近の演出至上主義な映画に慣れている方には少々厳しいのかもしれません。
しかし、後半になると、ペラペラアニメ*2の本領発揮、極限までその特長を活かし、観客を笑いへと心地よく誘ってくれました。


さて、ストーリー。
前述の通り、立喰師の仕事を語るものなのですが…基本的に、二部構成と考えた方がいいでしょう。戦後の闇市から続く生粋の立ち喰いに挑む立喰師と、巨大テーマパークに残る戦後の香りやファーストフードというシステムに挑む次世代の立喰師の物語、と分けることが出来ます。
ちなみに、よしつねが好きな方は、自己実現としての立喰師の面々である前半。後半は素直に笑わせてもらいました。
特に好きなのが、ケツネコロッケのお銀、哭きの犬丸、そしてフランクフルトの辰です。


ケツネコロッケのお銀は、その美貌*3を持って、コロッケ入りきつねそばでゴトをする女立喰師。
国会議事堂前の立ち喰い蕎麦で見事なゴトを見せてくれました。原作通りの語り口で。


続いて、哭きの犬丸。
彼は特定のネタ物を持たない、独特の立喰師。あるもの、出されたものは何でも食う。そして、彼が独特の立喰師と成す所以は、立ち喰いの踏み倒しを見破られる事によって、自己実現を成すと言う所。
日本人が大好きな敗者の美学の究極系だと僕は思います。だからこそ、僕は彼が大好きなんですけれどね。


最後はフランクフルトの辰。
彼は巨大なシステムである、某超有名テーマパークでのゴトについてずっと考えていました。しかし、そうした自己実現への強烈な願望が、いつしか強迫観念となり、自滅へと追い込まれてしまう…ある種、悲哀に満ちた立喰師です。
個人的に思うのは、彼こそが真に、現代に生きた立喰師の姿なのかもしれないと思う次第です。それ故に、僕は彼が好きです。


…で、自分が思うにですね、この映画、もしかしたら監督自身の半生を描いている、そんな気がしてならんのですよ。
自己実現への強烈な欲望、挫折、そして終止符。新たに蘇る立喰師の姿はどうも、監督自身のように思えてならんのですよ。
特に…冷やしたぬきの政。
彼の逸話にどうも、監督自身の心の奥底にある何かを塗り込められた印象があるんですよね。そして、その後に続く新世代の立喰師は、立身叶った監督の姿でもあり、苦悩でもあるように僕には思えます。
まぁ…これは深読みしすぎもいいところなんですけれどね。


さて。
長々と書いてきましたが、この映画、監督自身が言うとおり、作りたいから作った作品であり、そもそも興行的な収支をまったく考えていません。まぁ、昨今の他の作品に比べても、圧倒的に低予算ではありますが。
ですので、上映館も全国とは言え極端に絞られています。見ることそれ自体が難しい。決め打ちで見に行く覚悟が無ければ駄目なんです。


しかし、いっぱい書いてきた小難しい事を抜きにしても、十分に楽しめる映画だと思います。特に後半の新世代の立喰師たちは、解りやすくも明確にファーストフードと言う巨大なシステムへのあくなき挑戦を同じく物量、もしくは奇抜なゴトで勝負する、という姿を理屈抜きで笑える演出で楽しませてくれます。


いい意味で、プロフェッショナルの遊びを見た気がします。
もしちょっとでも興味が出たならば、ちょっと頑張っても見ておくべき、映画らしい映画でありました。


そして…。
帰り際に、ハンバーガーの哲に見事襲撃されたロッテリアで飯を食ったのですがロッテリアハンバーガーが美味くなっていました。
少なくとも、一昔前のウェンディーズ以上です。あの価格であの味なら、マック不要と僕は思いました。


更に後日談。
結構疲れていたのか、久々に車寝してしまいました。ロック開けっ放し、エンジン回しっぱなしで実に危ない…。
でも、たっぷり熟睡できたようです。疲れレス。


最後の最後。
デートムービーとしては厳しい。彼女の寝顔を見たければ良いかもしれないけれど…後半のテンションだけはお勧めなんですけれどね。
プロデューサーズが無難。本当はミュージカルで、と言いたいところだけれど、高いからね。次点としては連理の枝。ジウ姫は見たいけれど、作品自体には興味が全く無いよしつねでした。

*1:機動警察パトレイバーに対する怨嗟を込めた作品、と監督が言う、パトレイバーのキャストを使い、その舞台裏を語らせる短編映画。割り箸にイラストを張って、くるくる回すアニメーションをオールデジタルで表現していた。無論、普通の割り箸アニメでは表現不可能な…例えば、人物の超アップとかありえない変形などで十分見応えのある作品。また、パトレイバーファンだけでなく、銃器マニアやロボットアニメマニアも納得のストーリーです。公開自体も変則で、WXIII〜機動警察パトレイバーの幕間に上映、しかも週代わりで全三話となる作品でした

*2:もっと解りやすい言い方をすれば、パラッパラッパーやウンジャマラミーの様な表現方法、と言ったところかもしれない

*3:いやぁ、原作のイメージショットになってました兵頭まこが出演。これがスゲェ美人。よしつね的には逆に好み過ぎてそーいうイメージが沸きませんでした。でも、本当にいい女でした…