劇場版ラーゼフォン〜多元変奏曲〜

えー、昨今ではラブストーリーが再燃したように見えますが、あいも変わらずというのが僕の印象です。但し、悲恋とか最終的に手前勝手な解釈で幸せなんです的なものが意外に多い、と思います。
さて、なんでこんなラブストーリー話から入っていったかというと、ラーゼフォンSFラブストーリーと銘打たれているからです。
実はよしつね、このラーゼフォンという作品にはそれなりに思い入れがあります。まずTV放送時の無理矢理な放送時間にも関わらず、かなりきっつい話の展開とクオリティの高さを維持した、そこそこの良作だと思いますし、神林長平が「ラーゼフォン〜時空調律師」という、ちょっと毛色の変わったノベライズ*1もあって、劇場版を見たいとは思っていましたが、結構な間、見ることが出来なかったのですが、今回見ることが出来ました。
では、本編。
まず・・・ラブストーリーなんですが、どうもこの辺、やりたくないけれどもエヴァンゲリオンとの比較から入ってしまいそうです。まだ主人公が前向きでひたむき、それにラブストーリーと銘打ってあるだけあって、とにかくヒロイン(正確にはヒロインの昔の面影)を追っている姿は実に好感が持てます。
それから、朝比奈さんのムー化はもんのすごいです。もう痛くて痛くて・・・つらいです。でも、これがやりたかったんじゃあないかなぁ。
それから、ヒロインと結ばれるシーンは、主人公がまだヒロインがヒロインと知らない点がまた・・・。
うん、何か、書いていて確かにラブストーリーっぽい。しかしながら、表現方法があまりに大仰であるし、最後に主人公が神格化するのはどうしても、エヴァンゲリオンとの関連を覚えずにいられません。
僕としては、普通にラストを迎える・・・ムーを殲滅するってパターンでも楽しめた作品なんじゃないかな、と思います。
この作品の実に良いところは、エンディングのシーンです。
もうかなりどうでも良いような、ゼフォンのバトル・・・なんつーか、アダムとイヴのアレとか彷彿させる取っ組み合いは絵的には面白いんだろうけれど、冗長かつ果てしなく無意味に思えるんですよねぇ・・・。せっかく、SFというカテゴリで勝負しているのであれば、語りで勝負しても良いとも思います。キャストもそういうのに適している配役だと思いますしね。そういう意味では、神林氏のノベライズは、取っ組み合いがほとんど無いだけに、楽しめたんだと思います。
で、エンディングですが・・・年老いたヒロインが鏡の中のアリスの件を読むところ、そして・・・後は見て欲しいかな。
元々、スローペースで展開したTVシリーズの物語の再編集ですので、どうしても説明不足や意味不明な箇所は残るかもしれませんがラブストーリーとして見るのであれば、全く問題なし。です。それ以上の興味があればTVシリーズを見る、と。
余計なものがいっぱい付いていますが、ストイックなラブストーリーが見たい、という方は是非に。

*1:この本はラーゼフォンを知らなくても読めるし、知っていると神林テイストのラーゼフォンが楽しめる、面白い本。徳間デュアル文庫