スナッチソングス

この本の原文の発掘、復元、翻訳に尽力された全てのスタッフに惜しみない賛辞を送りたい。なお、括弧()内は訳者の注釈である。原文の直訳では現在の情勢にそぐわない為である。

スナッチソングス
スナッチソングスとは現代の表現であり、古来、中国では『瞑脳歌』と呼ばれていた。大陸に大きな戦が蔓延っていた頃、間諜の護身術として使用されていたが、後に攻撃に使用された際、あまりに危険な技であるとの事で時の皇帝に使用を厳に禁じられた技である。
この技は一見、何の変哲もない殴り書きの文章の様に見える。いや、ただの文章そのものである。しかしそれを理解できる者が一度読み始めると、憑りつかれたかの如く文章を貪り読み、一瞬の破顔一笑を浮かべ悶絶する。文章という形態から間諜の護身術に最適であったが、後にある商人が護身用に使用する事により広く一般に広まったと言われる。
更にこの技は改良を加えられ、特に攻撃用に使用された技は『魂珀殺歌』と呼ばれる事となる。これは通常の『瞑脳歌』と生成過程は全く同じであるが、己の業(偏執)や小宇宙(仕事)を極限にまで燃焼させる事により、死に至らしめる破壊力を有することとなる。また、小宇宙(仕事)を極限まで燃焼した暁に得られる境地を『背分戦士図(昼夜勤明け)』と呼び、これを修めた者は一瞬の後に文章を書き上げ相手に読ませ、確実に死に至らしめる事から『弐ノ筆知らず』と呼ばれていた。
(以上『恐るべき暗殺の国〜中国』民明書房刊より抜粋)